2019年12月31日から2020年1月2日までの3日間に、山梨県の日本第2位の高峰 北岳に登ってきました。
この北岳に登りたいと思ったのは、山と渓谷2018年12月号で北岳の見開きページを見たことと2019年2月に鳳凰三山から北岳とバットレスを眺めたことがきっかけ。
登山口までの12キロの林道歩き、標高差2400m、冬季テント泊装備と苦しいことばかりでしたが、ボーコン沢ノ頭から先の区間をそれらを帳消しにするほどの景色の連続。
さらに雪山に魅了された3日間でもありました。
冬季北岳のルートについて
北岳・間ノ岳-2019-12-31 / くらっしゅさんの北岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
北岳のルートは雪崩を避けるためにも池山吊尾根から登られており、その登山口である歩き沢橋までは奈良田からの林道を12キロ歩くルートか、夜叉神峠から鷲ノ住山を経由し、標高差400mを降るルートがある。
個人的には帰りに標高差400mの登り返しは体力的に厳しいこと、 鷲ノ住山 の登山道が凍結していた場合のリスクを考え、奈良田からのルートを選択。
今回のルートは標高1600~1800mの凍結区間、八本歯のコル周辺、稜線取りつきから山頂の3ヶ所が危険に感じた。
2日目の北岳山頂へのアタックはハードシェル等で防寒対策はしっかり行い、行動食や白湯などで低体温症にならないように気を付けていたものの、振り返ると低体温症になりかけていました。
樹林帯より上での行動時間をできるだけ短く意識することも重要だと痛感した登山でもありました。
12月31日 北岳登山スタート ベースキャンプ地までの登り
12月30日に仕事が終わり、一度家に帰り、パッキングしたザックを背負い、山梨県方面へ。
午前4時前までサービスエリアで仮眠したものの、ちょっと寝不足気味だけど、朝5時29分に北岳登山開始。
同じように奈良田から北岳を目指す方が3組ぐらいはいたのでちょっと一安心。
今回の荷物はこんな感じ。
いろんな可能性を考えると持っていくものがどうしても多くなってしまう。
全部で重量25キロ以上はありそうな気がする。
最初の関門はこちらのゲート越え。
ゲートを越え、ヘッドライトを付けた状態で歩いているとだんだんと空が白んできた。
歩き沢橋までの林道は徐々に登っていく上り坂で標高1000mを越えてくるとうっすら雪が積もっている。
高峰隧道というトンネル名を見て、このトンネルの先で南アルプスの主稜線でも見えるのかな~と考えながらトンネルを抜けると、そこには真白な白い稜線と青空が少し顔を覗かせる。
方角的にはこれから登る北岳周辺のはずだけれど、雲の流れなどを見ているとかなり風が強そうな気がする。
9時12分、出発してから3時間30分ほどで登山口の歩き沢橋に到着。
距離12キロ、地味に標高差400mを登ってきたので、ここまでで少し疲労が溜まっている。
ちょっと長めの休憩を取り、ここから一気に標高を稼いでいく。
標高1600m付近まで登ってくると凍結している区間が出てきて、細い尾根道の場所もあるため、アイゼンを装着。
今回の荷物の重さにアイゼンを付けた足は重く、登るペースがなかなか上がらない。
2019年の登山で1番苦しい区間はこの池山吊尾根の登りであり、「あぁ、年末に何でこんなことしているんだろう」と思いながら、少しずつ登っていく。
ようやく登りが終わり、池山吊尾根まで乗ることができたので、アイゼンを脱ぐことができた。
標高2050mまで登ってくるとしっかり雪も積もっており、次のアイゼンの出番は森林限界を超えるまではなさそう。
それなりに北岳に登ってきている人もおり、ワカンの出番もなさそう。
御池はすっかり雪の下。
池山避難小屋を少し覗いて、休憩させてもらおう。
池山御池避難小屋の中では先行している2人組がテント内で休んでいた。
ここらでテントを張ってしまおうかとも思ったけど、明日の北岳へのアタックを考えるともう少し先に進んでおきたい。
調子が良ければ、森林限界付近で泊まり、星空なども撮影してみたかったけれど、今回は無理そう。
雪が舞ってきたことと疲労具合から標高2372mの城峰でテントを張ることにする。
整地をし、テントを張ったあとは飲水用のきれいそうな雪をビニール袋に集める。
紅白歌合戦を聞きながら、雪を溶かし、今夜のキムチ鍋用の水、翌日のお湯を沸かしたりする。
城峰はドコモなら携帯を使うことができ、紅白歌合戦や翌日の天候などを調べることもでき、ソフトバンクからキャリア変更して良かったと感じる時間でした。
天気と暮らすの予報では明日の山頂付近は風速20m前後の風で、明後日(1月2日)の方が気象条件的には良さそう。
Lisaの紅蓮華も聞くことができたので、翌日に備えておやすみなさい。
1月1日 冬の北岳 ボーコン沢ノ頭から先の絶景へ。
あけましておめでとうございます!
午前4時30分ごろに目を覚まし、昨日のキムチ鍋の残りにラーメンを入れて、朝ご飯代わりにする。
思ったよりも冷え込みもなく、昨年の2月の南御室小屋付近でテント泊した時の方が寒かったぐらい。
ヘッドライトを装着し、午前5時30分過ぎに北岳へ向け、出発。
午前7時3分、標高2680m付近の砂払で初日の出を迎える。
ボーコン沢ノ頭で日の出を迎えたかったけれど、森林限界より上で初日の出を拝めたのなら御の字!!
モルゲンロート(朝焼け)で、足下から周りの景色まで赤く染まり始める。
富士山は今日も、きれいな形だ。
3000m峰の間ノ岳、農鳥岳も赤く染まり始める。
間ノ岳のどっしりした山容と奥の農鳥岳に続く稜線に魅せられ、立ち尽くしてしまう。
ここにこれただけでも、昨日の苦労が報われた気がする。
八ヶ岳がかっこよく見えるのは、やっぱり南アルプスからだと思う。
鳳凰三山から眺めたからも、ボコッと盛り上がる赤岳の姿がたまらないんだよな。
赤岳の山小屋に泊まっていた人たちも初日の出を楽しんでいるんだろうな。
目の前のピークがボーコン沢ノ頭で、ようやく北岳の姿が見えるであろう場所。
森林限界は越えたものの、無風に近い状況であり、ボーコン沢ノ頭の直下のところが少し凍結していたぐらいで、難しいところではなかった。
おぉぉ、北岳の迫力がすごすぎる!!
白く染まった北岳と所々黒く見えるバットレスの岩壁の姿に惚れ惚れする。
ここから北岳を正面に見ながら歩いていくこと、少し先ではバットレスの全容が見られるんだろうという期待からここまでの苦労が吹き飛んだように感じる。
北岳の右手を眺めれば、北アルプスの山並みが連なる。
1番左側は穂高岳や槍ヶ岳。
北アルプスで年越しした人たちも初日の出を楽しんだんだろうな。
北アルプスまで晴れ渡るとは2020年は最高のスタートだ。
中白根山、間ノ岳がどっしりと構える姿に左後ろに農鳥岳も見え、良い眺め。
ここでアイゼンを履き、ピッケルに持ち替え、ストックとワカンは重めの石を上に重ね、置いていくことにする。
絶対にここまで生きて帰って来よう、帰るときに忘れないようにしようと心に誓い、この先のエリアへと足を踏み入れる。
ボーコン沢ノ頭からしばらくは強風で雪が飛ばされているためか、積雪量もあまり多くない。
北岳へと至る稜線も八本歯ノ頭までは難所もなく、段々と近づいてくる北岳の姿にワクワクしながら歩いていた。
またこの日の風向きは西風であり、北岳に西風がぶつかり、池吊尾根はほぼ無風状態で絶好の登山条件。
池山吊尾根を歩く人影と比較しても北岳はやっぱり大きい。
少し右を見れば、日本で二番目に高い北岳、少し左を見れば日本で三番目に高い間ノ岳。
憧れだった北岳バットレスを眺められる場所までやってきた!!
ボーコン沢ノ頭からここまで、北岳、間ノ岳に圧倒されっぱなし。
八本歯ノ頭から八本歯ノコルへの下降点に到着。
幸いにもロープが出ており、先に進むことはできそう。
三点支持を意識し、一歩ずつ慎重に降りていきながら、帰りにここを登りで通過できるのは良かったと考えながら進む。
歩幅一歩分しかないトラバースもあり、カメラを出している余裕がない。
ここから北岳までは標高差300mを登りつめていくだけ。
標高800mからスタートしたことを考えるともう一歩のところまで来たと思える。
標高3000mも越え、稜線上では風が強いかもしれないと思い。ここで白湯と行動食を食べ、ゆっくりと休憩。
ここまででヒヤッとする場所は八本歯のコル周辺の岩場ぐらいで、風の影響を受けることもなく、登ることができている。
ここから眺める冬の間ノ岳、農鳥岳の稜線は文字通り、白峰三山と呼ばれるにふさわしい景色。
北岳の稜線と分岐の標識も見えてきた。
稜線まで取りつくトラバースで、数メートルに渡り氷化している箇所があり、これがもっと長い区間氷化していたら、ヒヤッとする箇所になっていたかもしれない。
風は思ったよりも強くなく、標高差も残り100m。
ここからすぐに稜線に取りついて、尾根上を歩いていくべきだったけれど、少し夏道を歩き、それから稜線に取りつこうと思ったけれど、氷化していたため、斜面にステップを作りながら回り込んでいく。
その先で稜線まで登りやすい場所で稜線へと戻ることができたけれど、かなり時間をロスした。
帰り際に自分が残したステップを確認、危険なルートに巻き込んで申し訳ない。
滑落したらまず助からないし、ルートファインディングを身に着けることや下調べをもっと入念にしておけば良かった、と今回の反省点。
北岳への稜線に復帰、日本2番目に高い場所も見えてきた。
もうすぐそこは頂上!!
標高 日本第2位 北岳。
夏には数十人の人で賑わう山頂も、今は独り占め。
肌を突き刺すような冷たい風にさらされながらも冬の北岳からの眺めを満喫していこう。
標高3193mの北岳から3190mの間ノ岳、3026mの農鳥岳へと続く稜線の景色がたまらない絶景。
また北岳、間ノ岳、農鳥岳と白峰三山と呼ばれる山々が真っ白に染まった姿を見ることができる日が来るなんて思ってもみなかった。
右から塩見岳、中盛丸山、兎岳、聖岳、赤石岳。
2年半前にこれらの山々を縦走した時は天候が悪かったので、また登り直したいエリア。
ピラミタルな形をした甲斐駒ヶ岳。
南アルプスのメジャーな山で登ってないのはあと甲斐駒ヶ岳と仙丈ケ岳。
北沢峠からピストンで登るのは味気ないからどう登ろうかな。
この北岳から無事に下山することができたら、次の大きな目標にしたいのは冬の仙丈ケ岳。
小仙丈ケ岳から仙丈ケ岳への白い稜線を歩いていくことを想像するとワックワクが止まらなくなる。
戸台川の登山道の復旧を考慮するとまだ数年先になるのかな。
やっぱり日本一の富士山はここから眺めても大きい。
富士山でやってみたいことは5月ごろに見られるという幻のサミットフォールを眺めに行くこと。
また御朱印巡りも始めたので、夏に御朱印をもらいに行きたいな。
充分に景色を堪能したので、ベースキャンプまで戻ろう。
帰りは尾根上の岩場を慎重に下っていき、無事に稜線の分岐まで戻ることができたところで風向きも変わり、池山吊尾根でも風にさらされるようになってきた。
八本歯のコルも越え、ボーコン沢ノ頭まで戻ってきて、ストックとワカンを回収し、アイゼンを脱ぐ。
富士山も夕焼けに映え、良い眺め。
ホッと一息つける場所まで戻ってこれたからか、1日中寒い風に晒されていたためか、思ったように足が進まない。
白湯や行動食も取り続け、体温を落とさないように気を付けていたけれど、振り返ると低体温症になりかけていたんだと思う。
何とかベースキャンプまで戻り、寝袋に入り、ひと眠り。
1月2日 年末年始登山の締めくくり 奈良田への帰り道
北岳から帰ってきて、午後10時ごろまで眠り、夕食にとり鍋をたべ、3日目は朝9時ごろまで眠っていた。
あとは奈良田へと降りるだけなのに標高1600m付近はスケートリンクのように道が凍っていたので、この3日間でも特に慎重に進む。
八本歯のコル、稜線上のルートに負けず劣らずのヒヤッとポイント。
あるき沢橋まで戻り、あとは奈良田へと12キロ歩くだけ。
緩やかな下りか平坦な道が続くだけなので、ひたすら歩くのみ。
年末年始北岳登山もこれで終わり。
車まで戻ることができ、車に荷物を載せ、ホッと一息ついたら、ドッと疲れが押し寄せてくる。
もうペンギンのようにヨチヨチ歩きしかできない状況だったけれど、まずは温泉まで車を走らせ、体の疲れを癒す。
この日は静岡市内の友人宅でお世話になり、翌日に愛知県へと無事に帰ることができました。
まとめ
北岳までのアプローチが長いことや危険な場所もあるなどのデメリットがいくらあっても池山吊尾根から先の景色は、そんなデメリットを吹き飛ばしてしまう景色が広がっている。
北岳の山頂に登らなくてもこの池山吊尾根を歩くだけでもかなりの満足感を得られるはず。
次、ここまで登ってくることがあれば、八本歯ノ頭の手前でブロックを積み上げ、テント泊していた人たちのように夕焼け、星空、月夜…と北岳の景色を見てみたいし、何よりもモルゲンロート(朝焼け)赤く染まる姿も見てみたい。
その前に仙丈ケ岳を始め、冬のテント泊、小屋泊で行きたいエリアもあるけれど、また登りに行こう。
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